感じる森林学
かつて存在した林学は、自然科学から社会科学まで間口の広い総合的な学問でした。また、現場に根差した実学だったはずです。
しかし、林業の衰退とともに林学の意義が薄らぐと、細かい分野に解体され、総合性が失われ、現場から足が遠のいてしまいました。
その弊害は政策に反映し、机上理論が押し付けられて、現場が硬直化しています。
それぞれの分野の連携を取り戻し、現場技術が政策に反映されるような理想の林学をめざして、無い知恵をしぼって書きました。
難しいことはわかりません。ただ森をさまよって、現場を歩いて、人々に聞いたことを感じるままに表現しました。
「感じる森林学」は2017年6月10日に一応完成しました。しかし、必要があれば随時改訂増補するつもりです。
通読すれば、あまり知られていない現在の森林・林業の実態を垣間見ることができるでしょう。無理に通読しなくても、好きな分野、必要な個所を拾い読みしていただければ、お役に立つかもしれません。
どうか気楽にお付き合いください。
目次はつぎのとおりです。
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別冊・森林経営管理法案批判は、2020.07版第17章へ移行しました。
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目次
感じる森林学 0
はじめに 6
第1章 森林 8
第1節 日本の森林 8
第2節 森林の変質 9
第3節 森林国 11
第4節 森林の定義 12
第2章 森林施業 14
第1節 分かりにくい専門用語「森林施業」とは 14
第2節 森林施業は役に立つ 16
第3節 人工林皆伐施業 17
第4節 造林技術の本質を見失わせた拡大造林 19
第5節 天然更新技術の再評価 20
第6節 天然林放置林施業 23
第7節 人工林無伐期施業と天然放置林施業 24
第8節 天然更新応用編 25
第9節 天然林の一斉林型天然更新 27
第10節 採取林業と育成林業 31
第11節 立地に応じた森林施業の難しさ 32
第12節 絵に描いた餅になった複層林施業 33
第13節 アート造林 35
第14節 沖縄やんばるの森林施業 37
第3章 造林 41
第1節 地拵 41
第2節 植付その1 42
第3節 植付その2 43
第4節 下刈の省略 44
第5節 下刈の実際 45
第6節 つる切 46
第7節 除伐 47
第8節 枝打 48
第4章 間伐 50
第1節 人工林の成長過程と間伐 50
第2節 間伐の意義を問い直す 52
第3節 間伐の本筋は生産技術 53
第4節 間伐の目的 54
第5節 密度管理図 55
第6節 間伐の方法 56
第7節 間伐の実際 58
第5章 森林保護 60
第1節 松くい虫被害と防除効果 60
第2節 激害型松くい虫被害の背景 61
第3節 松くい虫の一番の運び屋は人間 63
第4節 ナラ枯れ 64
第5節 忍び寄る材質劣化害虫の蔓延 65
第6節 森林・林業そして山村を滅ぼすシカ被害の恐怖 67
第7節 その他の草食動物による被害とシカ被害の比較 69
第8節 人工林にとどめを刺すクマハギ 70
第9節 山村の衰退と野生動物の進出 71
第10節 気象被害 72
第11節 山火事 76
第6章 治山と保安林 78
第1節 治山と砂防 78
第2節 保安林 79
第3節 治山と森林の防災機能 82
第4節 林内の土壌浸食 85
第5節 治山工事 86
第6節 渓流の復元 88
第7節 九州北部の大雨・大水害 89
第8節 一喜一憂する林業関係者 92
第9節 安易なマスコミへの警鐘 93
第10節 林野庁が行った流木災害等現地調査結果の概要 94
第7章 林内路網 97
第1節 林道の定義と性格 97
第2節 林道の規格と構造 97
第3節 林道密度 100
第4節 林道の施工 101
第5節 森林作業道づくり入門 104
第6節 林業専用道の怪 107
第8章 森林利用(素材生産) 109
第1節 林業の華 109
第2節 定義 109
第3節 伐木・伐採・伐倒 110
第4節 集材方法の変遷 110
第5節 車両系集材法 112
第6節 造材(採材) 114
第7節 運材 115
第8節 林業機械 116
第9章 木材販売 118
第1節 林業の出口 118
第2節 木材の流通加工 119
第3節 素材販売の方法 120
第4節 素材(丸太)販売の分析 122
第5節 原木の価値の変化 123
第6節 木材市場の衰退と直販 125
第7節 立木販売 126
第10章 森林調査 128
第1節 森林調査の種類 128
第2節 調査の季節 129
第3節 劇的に進化する森林調査技術 130
第4節 地上レーザー森林調査 131
第5節 それでも残る目視の重要性 131
第11章 森林計画 133
第1節 森林計画の歴史 133
第2節 国有林の木材増産と森林経理学論争 134
第3節 森林計画の体系 135
第4節 民有林の森林計画 136
第12章 労働安全 137
第1節 危険な林業労働 137
第2節 予測不能な危険に組織力・チームワーク・自己能力で対抗 139
第3節 労働災害事例集 141
1 刃物の扱い 141
2 慣れと遠慮(魚梁瀬盤台) 142
3 作業道から重機の転落 143
4 またしても悲劇が繰り返される 143
第4節 安全作業への今日的課題 144
第5節 野生動物や昆虫の脅威 145
第13章 自然保護と林業 147
第1節 自然保護と林業、対立から融和へ 147
第2節 自然保護と林業は同根 148
第3節 自然エネルギー開発と森林のせめぎあい 149
第4節 野生生物と人間 152
第14章 森林レクレーション・森林環境教育・森林ボランティア 156
第1節 森林レクレーション 156
第2節 森林環境教育 157
第3節 森林ボランティア 159
第15章 山村振興 162
第1節 消滅寸前の山村 162
第2節 山村振興を阻むもの 164
第3節 林業と山村振興 165
第16章 森林・林業政策 167
第1節 林政学とは 167
第2節 技術の総合の上に成り立つ林学と森林・林業政策 168
第3節 普遍性と地域性 169
第4節 広い視野と長期的展望 171
第5節 日本の森林・林業の進む道 173
1. 当面は公益的機能重視 173
2. 森林路網整備の充実 173
3. 役物林業の復活 174
4. コスト重視の造林 174
5. 多様性のある森林経営 175
6. 自伐林業 175
7. 山村で1次加工 177
第6節 政策推進の構造転換 178
1. 行政のスタンス 178
2. 補助事業のあり方 179
3. 行政効率のアップ 179
4. 山村住民への直接支払い 180
第7節 技術者育成と研究開発 181
1. 機能しない資格制度 181
2. 国有林の役割 181
3. 研究 182
4. 大学教育 182
第17章 森林経営管理法批判・森林ファシズムの台頭を許すな 184
第1節 憲法違反? 184
第2節 目的が不明確 184
第3節 突然現れた森林所有者の責務と市町村への業務とトラブルの押しつけ 185
第4節 森林ファシズム 185
第18章 森林・林業経営 187
第1節 いつまで続く統制林業 187
第2節 美林に潜む高コスト 187
第3節 目指すは百花繚乱の林業経営 189
第4節 政策・行政のあり方 190
第5節 収益性と公益性のバランス 190
第6節 自伐林業への支援 190